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ビットコイン建て債券が今後も広まらない致命的な理由

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今週の木曜日の日経新聞ビットコイン建て債券発行に関する記事が載りました。

発行体は情報ベンダーのフィスコ、発行額は円換算で約1億、引受るのはグループ会社ということで試験的な発行とのことです。法的、会計的な整理がまだできていないということで金商法でいう社債にはならないとか。それでは今後、ビットコイン建ての債券は、調達手段として活用されていくのでしょうか。私は広まらない致命的な理由があると思っています。

 

過去にクラウドファンディングについて記事を書きましたが、理屈は同じになります。

外貨建ての債券が発行される理由

BTC建て債券は、外貨建て債券を発行するのと形式的には同じように見えますが、外貨建て債券が発行される理由をよく考えてみるとビットコイン建て債券が広がらないことが見えてきます。

日本で海外の企業が円建てで発行する債券をサムライ債といいます。海外の企業にとってこれは、外貨建ての債券を発行するということになります。彼らは日本円を調達したいからサムライ債を発行するのではありません。彼らは、債券を発行すると同時にクロス・カレンシー・スワップ(XCCY、通貨スワップ、ベーシス・スワップともいう)というスワップ取引をすることで自分たちの自国通貨や米ドルに調達した円を変換するのです。彼らが自国通貨や米ドル建ての債券を発行して直接発行するよりも日本円で発行してからXCCYで換える方がお得だから発行するのです。

ならBTCでもXCCYをすれば良いじゃないかと思われる方がいると思いますが、現状XCCY市場がありませんし、今後も流動性のある市場として整備される可能性は低いとみられます。ビットコインには、中央銀行が存在しておらず、つまり、金融政策がないため短期金利がコントロールされておらず市場の需給で決定されてしまいます。こういう環境では、期待仮説に基づいて、まともな長期金利が形成できませんイールドカーブがつくれない)。そのため、長期金利が計算上必要なXCCYなどのスワップ取引もまともに取引することが難しいと思われます。さらに社債を発行する時には、通常はイールドカーブを使ってイールドカーブに会社の信用力分のプレミアムを上乗せしてプライシングがされます。つまり、社債の利率をまともに決めることができないのです。イールドカーブが形成できないということが致命的な欠陥になっているのです。これは、中央銀行を持たない金や銀などのコモディティにも言えることで、そのため金建て、銀建ての債券などというものが出回っていないのだと思われます。 

 

事業目的での調達可能性は?

上記の説明は、財務戦略上有利に調達できるという話ですが、もちろん事業で必要な資金を調達するために外貨建ての債券を発行することがあります。たとえば、海外の企業をM&Aする場合に買収用の資金は当該国の通貨になるため、その通貨建ての債券を発行したりします。海外で工場つくったりするためにも調達するかもしれません。ただし、BTCではこのようなことは現状起こりえません。いうまでもありませんが基本的にBTC経済圏が世界には存在していないからです。工場を建てるのにBTCが必要なんてまずないですよね。

 

それでも発行してBTCを調達してみた場合

事業に必要な資金を調達するためにBTCを調達したとすると、それを自国通貨に換えるためにスポットでBTCを売りに行くことになるかと思います。そうした場合、BTCのショートポジションを持つことになります。具体的な説明は、クラウドファンディングの記事のものを引用します。

 スポットでBTCJPYを売りに行くためもろにBTCJPYの市場変動のリスクを背負うことになります。(一応先物市場があるのでこれで期間はマッチしないかもしれないけどヘッジする人はいるかもしれません。)これの何がやばいかというと今1BTC借りて仮に無利子で1年後に1BTC返すというような約束だったとしてもBTCJPYが2倍になってたら単純に負担は2倍になります。100万円分のBTC調達して1年後BTCJPYが2倍になってたら200万返さなくちゃいけないわけです。もちろん価格が落ちていれば借りた人たちは得をするわけですが価格が仮に上がっていれば返済されないリスクは上がるかと思います。BTCのボラの大きさを考えると外貨というよりもたとえるならマイナーなEM通貨や株を借りて資金調達してるようなもので円が必要なのにこんな調達をするのはナンセンスだと思います。もちろん今後BTCのみで活動できる閉じた経済圏ができて円などの法定通貨を全く介さずビジネスができそこでの資金需要のために調達するのならこの問題は起こりません。ただ、私はそこまでのBTC経済圏が出来上がるとはとても思えず懐疑的に見ています。

ダイヤモンドオンラインの記事でもこの論点は指摘されています。

発行するインセティブはファイナンス目的以外

中央銀行が存在しないため、安定したイールドカーブが形成できないことから債券のプライシングが技術的に困難であることと、ファイナンス目的でBTCを調達することは基本的にリスクでしかないという話をしました。ここでは、一歩譲って仮に発行できるとしたらどういう人たちにニーズがあるのかを考えてみます。ファイナンス目的以外でなら一応BTC建ての債券を発行するインセンティブがあるかと思います。

 

債券の満期よりも短い期間でレンディングをし続けて鞘をとるのです。たとえば、1年間年利3%でBTCを調達した場合、毎日3%以上で365日貸し出せれば儲かることになります。ただし、常に貸し出せるとは限らない流動性のリスクを背負うことにもなりますし、レンディングのレートが将来下がってしまうリスクも背負います。こうなるとただ相場を張ってるようなものに思えますが、こういう人が少しぐらい出てきてもおかしくない気がしますが社債の調達のように大規模なものにはならないでしょう。

 

 

 解説だけでなくトレードにつながるインプリケーションのある記事をこれからも書いていきたいと思います。モチベーション維持になりますので参考になった方はぜひ投げBTCをお願いします。ご意見やご感想、今後書いて欲しいテーマなどもお待ちしております。

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